映画フィルム
「大嘗祭悠紀主基斎田」

 大嘗祭とは、天皇の即位ののちに、はじめて行われる新嘗祭です。昭和天皇の即位に伴い、昭和3年11月に行われた大嘗祭では、福岡県が主基斎田(すきさいでん)に選ばれ、その斎田で育てられた新穀が献上されました。
 福岡県立図書館では、斎田の勅定により新穀が作られ京都へ運ばれる様子が収められた映画フィルムをデジタル化しました。大嘗祭に献上される新穀が作られる様子が分かる貴重な映像をぜひご覧ください。

『大嘗祭悠紀主基斎田』第一巻

白黒/18分40秒/無音声

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挿入画像
0 00:00 (タイトル)/大嘗祭悠紀主基斎田
1 00:19 農林省農務局撮影
2 00:28 聖上陛下/御一代一度の/御盛儀大嘗祭は/御即位の直後/昭和三年/十一月十四日/京都に於いて/行はせらる………
3 01:14 悠紀主基斎田は/大嘗祭の/神饌神酒の/御料となる/新穀を作り奉る/田である
4 01:25 斎田點定の儀は/昭和三年二月五日/宮中神殿に於て/古式亀卜の/法に依って/行はせらる………
5 01:52 悠紀斎田/滋賀県野洲郡三上村/面積一町二十一歩/内…斎田/六反五畝二十七歩/付属地/三反四畝二十四歩
6 02:35 主基斎田/福岡県早良郡脇山村/面積/一町九反四畝二十九歩/内…斎田/八反五畝四歩/斎場付属地/一町九畝二十五歩
7 03:06 悠紀斎田/新穀供納の/栄誉を担いたる/大田主/粂川春治氏とその家族
8 03:35 主基斎田新穀供納/栄誉を担いたる/大田主/石津新一郎氏夫妻
9 03:57 大嘗祭悠紀斎田
10 04:07 悠紀斎田水源/清浄なる/水を湛えて/斎田へ供給する
11 04:35 昭和三年四月十日/行われたる/悠紀斎田祓式
12 05:10 祓主/祓詞を奏す
13 05:23 大麻切麻行事/大麻と塩湯にて/斎田の四隅を祓う
14 05:53 御饌(みけ)を献供す
15 06:04 禊祓(みそぎはらい)
16 06:13 農林大臣代理/松村農務局長/玉串を奉奠す
17 06:34 種籾/瑞穂(みづほ)の塩水選
18 07:26 播種/(昭和三年四月十九日)/苗代面積…百五十坪/品種…瑞穂
19 07:55 播種量は一坪六十匁(二合)
20 08:10 播かれた種子の整理
21 08:33 苗代の害虫駆除
22 09:01 採取した螟虫卵塊は益虫保護器に入れる
23 09:25 斎田の施肥/滋賀県知事先づ肥料を施す
24 09:56 斎田の耕耘
25 10:15 悠紀斎田御田植祭/昭和三年六月一日
26 10:41 祭主祓詞を奏す
27 10:58 農林大臣代理/東政務次官/玉串を奉奠す
28 11:10 典雅なる倭舞(やまとまい)
29 11:33 田植踊りは/歌につれて/緩かに………
30 11:50 歌と踊りに/拍子揃えて/早苗は次々と/植えられて/行く………
31 12:07 (悠紀斎田御田植歌)
32 13:21 第一面除草
33 13:38 追肥
34 13:58 第二面除草
35 14:21 斎田を囲む防風設備
36 15:00 山本農林大臣の斎田視察
37 15:20 悠紀地方の主護神/三上神社に玉串を献し……
38 15:30 黄金波打つ斎田にて……
39 16:05 豊穣
40 16:26 悠紀斎田抜穂式/勅使 長谷掌典
41 16:53 抜穂の儀
42 17:02 大田主/雑色人十名を率いて/斎田へ参入
43 17:13 神前に献供すべき稲四株を刈穂する
44 17:23 大田主稲束を三寶に載せて斎場に向う
45 17:40 奉祝する少国民
46 18:00 斎田の稲刈
47 18:34 (第一巻終)

 この映像は、農林省農務局によって撮影され、全三巻で構成されています。第一巻では、大嘗祭悠紀主基斎田の概要と、悠紀斎田での種まきから収穫の様子が収録されています。
 天皇即位後に行われる新嘗祭は、大嘗祭とされています。この大嘗祭で献上される神饌神酒の材料となる新穀を作るのが「斎田」です。この斎田は、宮中神殿にて亀卜により、国内から二か所選ばれます。京都以東から選ばれた斎田を悠紀斎田(ゆきさいでん)といい、西から選ばれた斎田を主基斎田(すきさいでん)といいます。
 昭和天皇即位にともなう大嘗祭では、悠紀斎田には滋賀県野洲郡三上村(現在の野洲市)が選ばれました。一方、主基斎田には福岡県早良郡脇山村(現在の福岡県福岡市早良区脇山)が選ばれました。

 悠紀斎田の大田主(太田主)である「粂川春治氏とその家族」と、主基斎田の大田主である「石津新一郎氏夫妻」が映像に残されています。

 悠紀斎田では品種「瑞穂」が採用され、この巻にはその種まきの模様と栽培過程が収録されています。斎田では、滋賀県知事が肥料を施したり、農林大臣代理として東政務次官が出席し御田植祭が行われたりするなど、国を挙げての事業だったことがうかがえます。

 二度にわたる除草や防風設備を施され、丁寧に育てられた斎田を山本農林大臣が視察し、稲が実る頃には抜穂式が行われ、新穀が収穫されることになります。

『大嘗祭悠紀主基斎田』第二巻

白黒/18分29秒/無音声

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挿入画像
0 00:00 (第二巻)
1 00:06 大嘗祭主基斎田
2 00:16 古式に則りたる主基斎田地鎮祭(昭和三年四月七日)
3 00:55 塩水選御年祭式(四月十三日)
4 01:22 大田主/石津新一郎邸に於ける種子塩水選
5 01:56 昭和三年四月十四日/行われたる/主基斎田祓式/瓊矛蟇目の神事
6 02:39 主基斎田鍬入式/(昭和三年四月十五日)
7 03:34 主基斎田播種式/(昭和三年四月二十日)
8 05:12 苗代面積…百五十坪/品種………昭代
9 05:56 祭殿を灌漑する水源
10 06:26 苗代の螟虫採卵
11 07:29 主基斎田御田植祭/(昭和三年六月五日)
12 07:46 胡蝶の如き/舞姫の参入
13 07:58 参列の諸員
14 08:18 古雅なる八乙女舞の奏進
15 08:59 農林大臣代理/阿部次官/玉串を奏奠す
16 09:23 御田植舞
17 09:41 (主基斎田御田植歌)
18 10:44 歌に調子/揃えた御田植
19 11:26 御田植は/六月五日より/三日間に亘って/行わる………
20 11:45 山本農林大臣の斎田視察(九月十三日)
21 12:10 豊かに稔る昭代
22 12:30 主基斎田抜穂式/勅使庭田掌典
23 12:56 抜穂の儀(昭和三年九月二十一日)
24 14:22 稲刈りは/九月二十一日より/三日間に亘って行わる
25 15:10 脱穀
26 16:05 籾摺調製
27 16:35 精米
28 17:12 精米の布磨き
29 17:35 粒選
30 18:23 (第二巻終)

 第二巻では、主基斎田での種まきから収穫の様子が収録されています。
 映像は主基斎田の地鎮祭から始まり、塩水による種子水選に続きます。その後、瓊矛蟇目の神事、鍬入式と斎田の準備が整っていきます。

 主基斎田では、種籾として「昭代」が使われます。この「昭代」を育てる斎田の灌漑の水源は、近代化した現在の福岡市では見られない風情をたたえており、当時を知る上では貴重な映像です。

 成育した苗を斎田に植える際には、御田植祭が開かれます。残念ながら音楽は残されていませんが、村民による歌にのって、苗が植えられていく様子がうかがえます。ここでは、神事のほか、八乙女舞や、当時の村民による御田植舞も披露されます。この御田植祭には、農林大臣代理として阿部次官が出席しています。

 山本農林大臣による視察を終え、豊かに実った斎田では、抜穂の儀が行われます。稲刈りもまた三日間にわたって行われました。収穫された稲は、脱穀、籾摺り、精米を経て、人手による「粒選り」が行われます。この粒選り作業は圧巻であり、当時の人々がいかに丁寧にこの米を扱っていたかが感じられます。

『大嘗祭悠紀主基斎田』第三巻

白黒/18分40秒/無音声

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挿入画像
0 00:00 (第三巻)
1 00:08 大嘗祭悠紀斎田
2 00:18 脱穀
3 00:44 籾摺調製
4 01:18 精米
5 01:48 精米の布磨き
6 02:21 精米の粒選
7 03:19 新造車に安置して京都へ………
8 03:31 京都駅到着
9 04:10 辛櫃は奉耕者奉昇す
10 04:20 序列を整えて京都御所へ
11 04:37 京都御所参入
12 05:23 恙なく責任を全うせる…/昭和三年十月十六日/悠紀斎田新穀供納式
13 05:58 大嘗祭主基斎田
14 06:08 新穀は/十二個の辛櫃に納めて地元進発……/(昭和三年十月十六日)
15 06:54 新造車に安置して西新町駅出発
16 07:29 門司より関門海峡を越えて
17 08:03 京都駅到着/(十月十七日)
18 08:36 辛櫃は奉耕者奉昇す
19 09:03 京都御所参入
20 09:34 滞りなく重任を果せる/昭和三年十月十七日/主基斎田新穀供納式
21 10:25 輝く昭和聖代/御大禮の盛儀/御大禮謹寫團
22 10:36 栄ある行幸の日/十一月六日
23 10:43 朝まだき頃/御鹵簿は厳かに/二重橋を渡らせ給う
24 11:12 賢所御羽車
25 11:32 輝く天皇旗を先だたせ給う鳳輦
26 12:15 皇后陛下御馬車
27 12:46 大禮使総裁宮殿下/各皇族殿下
28 13:00 供奉の各大官
29 13:11 奉祝門御通過/一路平安西の都に向わせ給う
30 13:42 感激に満ちて迎えまつる京洛の天地
31 14:25 午後三時京都駅着御
32 14:42 堺町御門を経て白砂浄き御苑内へ
33 15:06 建禮門を過ぎ九重の宮居深く
34 15:24 九重の雲深うして/尊き御大典の御儀拝し/奉らんはあまりに畏し/されば御大禮に先ずる/二日当日の紫宸殿の/儀をさながらに御習禮の/御模様を拝する事を許さる
35 16:09 右近の橘/宮内省御貸下品より謹寫
36 16:18 左近の櫻/宮内省御貸下品より謹寫
37 16:46 菊花中錦旗/宮内省御貸下品より謹寫
38 16:56 鼓/宮内省御貸下品より謹寫
39 17:06 鉦/宮内省御貸下品より謹寫
40 17:15 十一月十日午後三時!
41 17:21 御即位の大禮ここに/執り行はせられ/田中総理大臣の/発声に応ずる/聖壽万歳の叫は/津々浦々にまで/とどろき渡りぬ
42 18:30

 第三巻では、悠紀主基斎田で収穫された新穀の京都までの移動と、京都御所での大嘗祭の様子が収録されています。
 場面は、悠紀斎田の収穫の模様から始まります。脱穀、精米を終えた新穀は、粒選り作業を経て、新たに建造された列車にて京都に向かいます。「供納米」と高く掲げられた新穀の列は長く、京都御所へと続きます。

 一方、主基斎田では、収穫された米は主基斎田のある脇田村から西新町の駅に向かいます。西新町でも、新たに造られた列車にて、供納米は一路京都に向かいます。

 現在と異なり、まだ本州と九州は鉄道でつながっていないため、関門海峡は船で渡ります。再び、供納米は鉄道にて京都駅へ向かい、京都御所に運ばれて行きます。

 場面は変わり、このあとの映像は、天皇の即位の礼に焦点が当てられていきます。当時の京都の街並みや京都御所、それを取り囲む人々の姿が記録されており、興味深い内容となっています。

映画フィルムについて

 今回デジタル化した映画フィルムは、昭和3年に東京市下谷区上根岸町の岩岡商会によって製作されました。このフィルムは、35ミリフィルムで、全3巻で構成されています。当時、農林省農産課は農業改良の普及活動として映画フィルムの頒布を行っており、このフィルムもその一つです。農林省農産課撮影の『農事改良活動写真フィルム目録』(昭和3年10月)には、昭和3年新規製作として紹介されており、呎数約3,000、価格約330円と記載されています。
 当初、このフィルムは、主基斎田関係資料とともに、福岡県立農業試験場(現福岡県農林業総合試験場)が所蔵していました。のちに、福岡県文化会館(福岡県立図書館の前身)に保管を委託され、昭和61年に福岡県立図書館に寄贈されました。今回のデジタル化は、昭和47年に複製された16ミリフィルムから行いました。

資料リスト

      
  • 『大嘗祭主基斎田写真帖』 福岡県 1928年
    (国立国会図書館デジタルコレクション  http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1906703
  • 『主基齋田用地脇山村風景絵端書』福岡県脇山村奉賛会 1928年
  • 『昭和主基斎田記録』 福岡県 1931年
  • 『詳説福岡県議会史 昭和篇』第1巻 福岡県議会事務局/編 福岡県議会 1957年
  • 『主基地方風俗舞 昭和のあゆみ』主基地方風俗舞保存会 1984年