(請求記号:KC70 大正3年創刊 全90集 筑紫史談会発行)
『筑紫史談』は筑紫史談会の機関誌です。大正3年4月創刊され、昭和20年6月までに90集が刊行されました。当館は刊行当時のものと後年作成された復刻版の両方を所蔵しています。
筑紫史談会とは大正2年5月福岡史談会と太宰府史談会が合併し発足し、旧福岡藩幕末維新史研究と太宰府史研究を主要テーマとして活動した郷土史研究団体です。会員は福岡県内のみならず、東京、海外などにも幅広く分布していました。その内訳も政治家、官僚、実業家、学者など多岐にわたり、福岡県の近代史に名を残す錚々たる人物が数多く名を連ねています。
明治末期から大正期にかけ、全国各地で「史談会」と呼ばれる歴史(郷土史)研究団体が結成され、福岡県においても多くの史談会が結成されました。その中で機関誌を発行したのは筑紫史談会だけだったと言われています。
創刊号の「発刊の辞」には「会員中ニハ一二ヲ除クノ他ハ、史学ヲ専攻シタモノハ無イ、又旧式ノ歴史観ヲ有スルモノモ全ク無イトモ言ハレヌガ、何レトモ其歴史研究ニ関スル新知識ヲ有スルモノハ甚乏シイ、サレバ有識専門家ノ達眼ヨリ視ラレタナラ、幼稚ヲ免レヌモノアルベキモ、此等ハ本会ノ境遇上に視テ、暫ラク之ヲ寛假セラレ、願クハ其高誨寄書ヲ賜ハランコトヲ懇請スル」と会員は歴史研究の専門家ではないと明言しているものの、その研究レベルは高く、筑前地域における郷土史研究の発展に大きく寄与し、現在でも郷土史研究者にとって必読の資料といえます。
主な執筆者は以下の通りです。
この他にも多くの郷土史研究者たちが筆をふるい、昭和20年6月の第90集まで刊行されましたが、残念ながら第2次世界大戦による印刷事情の悪化のため、廃刊となりました。その後、昭和44年から昭和55年にかけて福岡県文化財資料集刊行会により全集が復刻されましたが、その際には当館所蔵のものが使用されました。
現在、刊行当時のものは資料保存のため利用できませんが、復刻版で利用することができます。
【参考文献】日比野利信氏著「筑紫史談会の成立と活動」(『太宰府市史 通史編別編 古都太宰府の展開』【第三章第二節】239ページから)