福岡県立図書館協議会の提言について
 福岡県立図書館協議会は、平成5年11月8日「福岡県立図書館の整備・充実について」の建議において県立図書館に求められる役割と機能を示しました。

 しかしながら、近年の革命的な情報技術(IT)の急速な発達、福岡県内における市町村立図書館の増加、公立図書館の在り方に関する国等の様々な報告、答申等県立図書館を取り巻く環境の変化は著しく、今後県立図書館が重点的に取り組むべき課題の整理及び必要な方策を示すため、同協議会は平成14年7月23日「福岡県立図書館の役割とその推進方策について」の提言を行いました。

 
本提言を受け、県立図書館では、県民及び市町村の二一ズに応える新たな図書館を目指し、関係各位の御理解を賜りながら、より一層努力してゆきたいと考えております。

提言の概要は次のとおりです。

T IT化について

1 IT化の必要性
 図書館は地域住民の様々な要求に応じて、情報提供のためのサービスを行う施設であり、また、新しい情報通信技術の活用が図書館の「地域の情報拠点」としての機能を飛躍的に拡大することから、福岡県が平成13年12月に公表した電子県庁推進計画と歩を一にして県立図書館のIT化を進めるべきである。
 相羽棄協議会長より提言を受取る安野義勝館長(左)
相羽堯協議会長より提言を受取る
安野義勝館長(左)
2 県立図書館に求められるITを活用した利用者サービスの充実
(1)館内システムの整備
@インターネット対応、多言語対応、全文検索機能等多機能・高品質な図書館システムの導入
A社会的バリアーを持つ人々など多様な利用者に対応したOPAC(Online Public Access Catalog利用者開放端末)の導入
B速報性・検索性に優れた電子メディアと紙媒体資料を有機的に組み合わせること
C各種のデータベースを同一画面上で一括して検索できる統合的検索システムの構築
D有用で信頼性の高いサイトを主題別に組織化したメタサイト等の構築
Eキーワード等の多角的検索機能を備えたレファレンス回答事例集のデータベースの構築

(2)広域ネットワークシステムの構築
@県内市町村立図書館、県内大学図書館及び国立国会図書館の所蔵資料情報を単一のインターフェイスから迅速に検索できる横断検索システムの構築
A自宅からインターネットを活用して県立図書館所蔵資料の貸出予約をし最寄りの図書館を通して借り受けができるシステムの構築

(3)郷土資料のデータベース化等
@貴重資料、古文書等のデジタル化
A郷土関係雑誌記事索引、人物文献目録等郷土に関する研究に必要な情報のデータベース化
B貴重資料、古文書等の保存体制の整備

II 県内市町村立図書館等の支援センターとして果たすべき役割

 
県立図書館に対して、市町村立図書館等の活動支援センターとしての機能充実が強く求められており、図書館間の相互協力・支援強化を始め、県公共図書館等協議会の組織活動の充実を図る必要がある。

 
また、県内の市町村の合併の動向を見ながら、図書館サービスの全県的な伸展を図る観点に立ち、図書館未設置市町村に対し図書館の設置及び運営に対する指導・助言等を計画的に行わなければならない。

(1)相互貸借物流システムの整備充実
@市町村立図書館等への物流頻度を高める。
A物流体制整備の一環としての拠点館方式(中継館)の拡大

(2)図書館未設置市町村への支援協力
@図書館未設置市町村に対する図書館作りに関する啓発活動の展開
A図書館未設置市町村への設置に関する相談体制の整備・充実
B各種研修会の実施や県立図書館と市町村間の人的交流等による人材育成の促進

(3)福岡県公共図書館等協議会の活動に対する支援・協力
@各種専門委員会を設置し、市町村立図書館等の抱える諸問題の解決を図る。
A市町村立図書館等職員の資質向上のため、各種研修会の一層の充実
B市町村立図書館等の活性化を図るため、地区協議会組織の一層の充実
C図書館に関する資料・情報の収集及び提供に努め、市町村立図書館等の活性化を図る。

V 早急に対応を求められる課題

(1)資料収集についての機能分担等
 県民の知る権利を保障するためには、資料提供の充実等サービスの向上を図る必要があり、資料購入費の充実を図る必要がある。しかし、多様化する県民の要求に応えうる資料をすべて県立図書館で収集することは困難であることから、市町村立図書館等関連機関と連携・協力し、分担して資料収集をするための検討を行う必要がある。

(2)資料保存スペースの確保
 文化遺産としての図書資料は、県民の共有財産として保存し、未来に継承されなければならない。また、県立図書館は自館の資料を保存するのみならず、市町村立図書館等で利用が少なくなり廃棄を検討しているような資料を受け入れるデポジットライブラリー(保存図書館)としての機能も合わせ持っている。県立図書館の書庫は、まもなく収容能力の限界を迎えることから資料保存スペースの確保のための対策が必要である。

(3)職員の資質向上
 IT革命、国際化等急激な社会の変化、また、複雑かつ高度化した利用者二一ズに対応するために、県立図書館職員の情報リテラシーの向上及び各分野の専門的知識の向上を図ることが重要であり、IT研修や各種専門研修への継続的・計画的な参加機会の確保が必要である。なお、職員の大学院派遣についても検討する必要がある。

(4)子どもの読書活動の推進
 子どもの読書離れが社会問題となり、平成13年12月には、「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定された。このような中、全国的にブックスタート運動など、子ども読書推進が全国的な広がりを見せており、県においても、青少年アンビシャス運動推進事業の一環として子どもの読書の推進が図られている。県立図書館では、「子ども図書室」を増改築し、「子ども図書館」として子ども読書推進の拠点を目指すことになった。そこで、子どもの読書推進を図るため、次のような方策が必要である。
@子ども読書の重要性の啓発
A子ども読書推進技術の調査研究および普及
Bボランティアの資質の向上を図るための研修会等の実施

おわりに
 県下56市町村に図書館が設置され(設置率で58%)、約450万県民(人口比で89%)が住所地の身近な市町村立図書館で図書等を借りることができる現在、県立図書館の役割も「県が行うべきこと」、「県しか行えないこと」に重点を移す必要がある。

 
これを達成するために、県立図書館が「ITを活用し利用者サービスの充実を図ること」、また「市町村立図書館等への更なる支援・援助を行うこと」に重点を置いて運営することが必要であるとの認識に立ち今回の提言を行うものである。

 
最後に、県立図書館がより県民に開かれた、利用しやすい図書館になること、図書館の運営に当たってはアウトソーシング等民間活力を積極的に活用し、最小の費用で最大の効果を上げるよう切に期待するものである。
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