福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室 |
12月のおすすめ本 |
皆さんは小説が映像化された時、原作から読みますか?それとも映像作品から見ますか? 12月1日の「映画の日」にちなんで今回は映画やドラマ、アニメになった作品を集めました。 (リストはこちら。予約もできます!) |
こんな夢を見た。
名作には名書き出し。語りだし後の空白と改行の静かさに空気がはりつめます。その先に待ち構えているものが何なのか、妙に惹かれているうちに夢の世界に連れ込まれてしまいます。語り手の見た夢の話を十夜分集めたとても短い小説です。 ぞっとするのは第三夜。内容は伏せておきます。ただ、こんな夢を見てしまったら、目を覚ますのも、目を閉じるのも厭です。 一体どうすればいいのか。
そんな時は映画『ユメ十夜』の第六夜を見てください。仏師・運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいるのを見物し、自分にも出来るのではないかと、夢を抱く夢の話。監督・松尾スズキ、主演・阿部サダヲの軽快な演劇の世界が広がり、最高潮に達した!と思った途端に、文豪・夏目漱石の世界がズンと現れます。 短編なので、一夜ずつ寝る前に読むと、幻想的な夢を楽しめるかもしれません。はたまた、うなされて寝汗たっぷりの夜になるか…。(こ)
※2007年 「ユメ十夜」として映画化 |
日本語ってどんな言語でしょうか?生まれてからいままで自然に使ってきたけれど、この表現やあの慣用句って一体なにに由来するものなのか、あなたは答えられますか? この本にでてくる外国人たちは、日本の文化がだいすきで日本語を学んでいる日本語学校の生徒たちです。第一言語ではない日本語を、外国人の目線からとらえるとこんな風に見えているのかという、目から鱗のおもしろさが目白押し! 具合の悪そうな先生をみかけて心配そうに発した一言は、「…先生あたまわるいんですか?」「先生はきもちがわるいです。」って、笑ってはいけないけれど、思わずふきだしてしまいますよね。ただ、これらの言い回しは、外国人にとっては、とても使い分けの難しいもの。ほかにも、「すわっていいですか?」を「さわっていいですか?」と、これもおしいけれども大違いの意味になってしまいますよね。 言語の習得への早道は失敗を恐れないこととはよく言いますが、確かにそれに気づいたときの恥ずかしさは、忘れられないものかもしれません。そして、そんな個性豊かな外国人学生たちに、日本語だけでなく、日本の文化や風習を教えてくれるのが、本シリーズおなじみの「凪子先生」です。学生たちが日本の社会に一日でも早くなじめるように、また希望どおりの日本語レベルに到達できるように、凪子先生の愛あるつっこみが今回も炸裂です!(ちなみに、2010年にドラマ化されましたが、凪子先生のキャラクターは、別人でした…。)
※今回は日本語学校シリーズの完結編となる『祝!卒業編』となっています。シリーズ@とAもあわせてどうぞ!
※2010年 「日本人の知らない日本語」としてドラマ化 |
もしあなたが誰かのために死ぬために生まれてきたとしたらどうしますか? ここは人里離れた森の中の全寮制施設のヘールシャム。そこは小中高一貫校のようにも見えますが、毎週欠かさず受ける健康診断や図画工作の作品作りに重点をおいた授業、時々ヘールシャムを訪れ作品を持っていくマダムと呼ばれる女のひと、そして先生たちの態度や言動もどこか奇妙です。生徒たちに親の気配はなく外出もしません。そんな中でもキャシー、ルース、トミーの三人は普通に泣いたり、笑ったり、また恋愛をしたり、青春の日々を過ごしていました。そして、だんだんと自分たちの生まれながらに定められた過酷な運命を理解していきます。 わたしたちも人生の中で、自分ではどうすることもできないことが沢山おこります。そんな時、あなたならどうしますか?じっと我慢する、とにかく足掻く、受け入れて生きていく。いろんな選択肢があると思いますが、それが自分の死にかかわることだったら?ぜひこの本を読んで考えてみてください。2011年には映画化されていて、とても映像が美しく、原作を読んでなくでも十分楽しめます。(き)
※2011年 「わたしを離さないで」として映画化 |
魔法が実在するインガリー国で実家の帽子屋を手伝うソフィーは、ある日荒れ地の魔女の呪いによって九十歳のおばあちゃんの姿に変えられてしまいます。彼女は家にいたら家族を驚かせてしまうと、ハウルという若い魔法使いの棲む城に掃除婦として転がり込みます。街では「美女の心臓を食らう」という噂のハウルですが、実際はお風呂が大好きで容姿にこだわるという若者。ソフィーのせいで髪を染める魔法に失敗した時は体から緑のねばねばを出すという一面も。 ハウルに魔力を提供している火の悪魔カルシファーや弟子のマルクルと次第に打ち解けていくソフィーは、やがてハウルと力をあわせて魔女と闘うことになり・・・。
宮崎駿監督によって映画化された作品ですが、この小説には姉妹編があることをご存知ですか?その『アブダラと空飛ぶ絨毯』という作品では絨毯売りの青年が主人公。こちらにはハウルと結婚したソフィーが登場します。(う)
※2004年 「ハウルの動く城」として映画化 |
主人公の「俺」の職業は死神。調査員として対象の人間を一週間観察し、「可」か「見送り」かの判断を下すのが仕事。「可」と判断された人には八日目に死が実行される。
死神というと鎌を持ってフードを被った姿を想像しがちですが、この作品の死神はちょっと違います。登場するのは千葉という名前を与えられ、仕事で人間の世界に来るたびに雨が降っている雨男で、好きなものはミュージック、嫌いなものは渋滞というどこまでも人間臭い、しかし「人間の死に意味はない」と言い切ってしまう死神(金城武)。彼が企業の苦情処理という仕事にうんざりしている女性、仇討をたくらむやくざ、千葉が人間でないことを見抜く女性など様々な対象者と関わっていく連作短編集です。
映画は6つの短編のうち3つを取り出していますが、クールだけれどちょっと感覚のずれた死神の様子や物語同士のリンクは健在です。(う)
※2008年 「Sweet Rain 死神の精度」として映画化 |
この他にも映像化された本を集めています。 ぜひご覧ください。 (予約もできるリストはこちら。) |