福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室

2月のおすすめ本

横巻き: Happy Valentine

 2月のイベントといえばバレンタイン。

 ちょっと切なくなるような物語や思わず微笑んでしまう可愛らしい物語など恋愛に関する本を集めました。

(リストはこちら。予約もできます!)

円形吹き出し: すべて貸出できます
貸出中の本は予約できます
テキスト ボックス: 『潮騒』
 三島由紀夫/著 
   新潮社
  918/6/772−4

会えない時間が 愛育てるのさ 

郷ひろみのヒット曲、『よろしく哀愁』の一節です。会えない時間が、愛を育む。昔の流行語「亭主元気で留守がいい」も解釈次第です。ただ、二人がまだ十代で、心が通い始めたばかりだったら…。

 

三島由紀夫が二十九歳の時に書いた『潮騒』は、二十代の終わりに「青春」を想った節目の作品です。誰もがあの頃を振り返ったときに、主人公の新治やヒロインの初江と同じ心の体験を思い出し、あたたかい気持ちになるはずです。いや、気持ちを重ねすぎるあまりに歓喜の声をあげたり、恋敵に野次を飛ばしたりするかもしれません。ひとりの空間で読むことをおすすめします。さらに再読の方や、どっぷり小説に浸りたい方には、離島や海辺で潮騒を聞きながら読むことをおすすめします。さらにさらに、もう新治や初江になりきりたい方は、三島自身も何度か足を運んだ舞台の歌島のモデル、三重県の伊勢湾にある神島へ旅に出るのもいいかもしれません。過去に5回映画化された本作のロケ地にもなっています。(こ)

 

テキスト ボックス: 『スヌーピーの大好きって手をつないで歩くこと 』
  チャールズ・M.シュルツ/著
 主婦の友社
 726/5/385

2月14日はバレンタインデーです。日本では女性から男性へチョコレートを贈ることが一般的ですが、海外では女性から男性にだけでなく互いにプレゼントを贈り合ったり、家族や同性の友達にプレゼントをしたりします。最近では日本でも、同性同士でチョコレートを贈り合う友チョコというものも一般的になり、大切な人にチョコレートを贈る日になってきています。

今年のバレンタインデーは異性に対しての愛だけではなく、友達、家族など大切な人に対しての愛ということも考えてみませんか?

そんなあなたにおすすめの本は『スヌーピーの大好きって手をつないで歩くこと』です。恋愛している人は自分の気持ちを代弁してもらっているような、少しマンネリ気味の人ははっとさせられるような、恋をしていない人は家族や友達に対するような、そんな素敵なことばがたくさん書かれています。普段の生活の中でその人がいるのが当たり前になって、ついないがしろにしてしまう。そんなことが当てはまる人はぜひ。「大好きって全世界」と思って暮らせたら素敵です 。(き)

()いがたき智恵子」

 

智恵子はみえないものを見、

聞えないものを聞く。

 

智恵子は行けないところへ行き、

出来ないことを()る。

 

智恵子は現身(うつしみ)のわたしを見ず、

わたしのうしろのわたしに焦がれる。

 

智恵子は苦しみの重さを今はすてて、

限りない荒漠の美意識圏にさまよい出た。

 

わたしをよぶ声をしきりにきくが、

智恵子はもう人間界の切符を持たない。

 

恋と呼ぶにはあまりに重く、あまりに深く、愛と呼ぶには、あまりにもろく、あまりに哀しい。詩人であり、彫刻家でもあった高村光太郎は、世間からみると恵まれた環境に生まれながらも、もがき、苦しみ、苦悩の人生を送りました。そのことは、彼の詩に如実に影響を及ぼしています。その光太郎が愛し続けた1人の女性、長沼智恵子は、一方では光太郎の光となり、一方では影となりました。精神を病んだ智恵子の心の病と向き合ってきた光太郎ではありましたが、光太郎の想いはかなわず、智恵子は回復することなくこの世を去ります。いま自分の目の前にいるはずなのに、触れることのできない愛する女性。この詩からは、そんな光太郎の虚しさや哀しさが感じられます。

この『日本語を味わう名詩入門』シリーズは、編者のわかりやすい解説とその詩人それぞれをイメージした絵とを、詩に組み合わせることにより、初めての方でも抵抗のない詩の入門書となっています。ここでは、詩人高村光太郎の「()いがたき智恵子」をご紹介しました。みなさんもこの本たちを片手に、この冬、すばらしい詩の世界に一歩足を踏み入れてはどうでしょうか。(高村光太郎『千恵子抄』は、書庫にあります。貸出もできますので、興味のある方はこちらもどうぞご覧ください。)(の)

 誰でも自分が好きな人には幸せでいてほしいはずです。しかし、その人の幸せを自分の幸せと引き換えにできますか?自分がとても大切なものを失うことになっても、その人の幸せを願うことができますか?そして、そんな選択ができる人はどれくらいいるのでしょうか。

 

 『失はれる物語』に収録されている表題作「失はれる物語」はわずか40ページほどのとても短いお話ですが、そんなことを考えさせられます。

 妻と幼い娘のいる主人公は交通事故で寝たきりになってしまいます。意識ははっきりとしているものの、視覚も聴覚も失った彼に残されたのはわずかに動く指と片腕の感覚のみ。ピアニストでもあった妻は彼の腕を鍵盤に見立ててピアノを弾き、指先でコミュニケーションをとります。しかし日が経つにつれ彼は妻の指先から彼女が次第に疲れ果てていくことにきづいてしまいます。彼女を自分から解放してあげたくても、指しか動かない自分には何もできない。やがて彼が思いついた唯一の方法とは・・・。(う)

 

 京都の大学に通う主人公は、ある時後輩の「黒髪の乙女」に恋をします。いきなり告白なんてできない彼は、まずは外堀から埋めようと偶然を装い、京都のあちこちで彼女との遭遇を企てます。どうみてもウソ臭い「たまたま通りかかった」という台詞を「先輩、奇偶ですねえ!」と何の疑いもなく信じる天真爛漫(でもお酒にめっぽう強い)な彼女。

 そんな二人をとりまくのは一癖もふた癖もある先輩方。彼らが次々と巻き起こす奇妙な事件に巻き込まれるうちに二人の仲は進展するのかしないのか。

 

 ちょっと独特の文体やあまりにも奇妙な人達、奇妙な出来事ばかりで、読みにくいなあと思うかもしれませんが、それに負けずに読み進めてみてください。京都に行ったことのある人ならさらに楽しめて、行ったことのない人は京都に行きたくなる可愛らしい小説です。(う)

 この他にも恋愛に関する本を集めています。

 ぜひご覧ください。 (予約もできるリストはこちら。)

テキスト ボックス: 『日本語を味わう名詩入門8  
高村光太郎』
 萩原昌好  編
 あすなろ書房
 911/56/2433−8
テキスト ボックス: 『失はれる物語』
 乙一 著
 角川書店
 F/オ215/15
テキスト ボックス: 『夜は短し歩けよ乙女』
 森見 登美彦 著
 角川書店
 F/モ82/3