福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室 |
1月のおすすめ本 |
今回ご紹介する本は、平成20年第30回 野間文芸新人賞を受賞した『ミュージック・ブレス・ユー!!』です。野間文芸新人賞とは、財団法人野間文化財団が主催する純文学の新人に与えられる文学賞です。 この作品の主人公であるオケタニアザミは、アメリカンパンクをこよなく愛し、『音楽について考えることは将来について考えることよりずっと大事』な高校三年生の女の子。 高校三年生という進路について真剣に向き合わなければならない時期にあるアザミですが、進みたい道は見つかっておらず、進級すら危ないという状況で苦手な数学の補講に追われる日々を送ります。進路に対する葛藤や友達や異性との関係に対する心理描写がリアルに等身大に描かれており、中高生のみなさんはもちろん、かつて10代だった方も共感できる部分があるのではないでしょうか? ごくありふれたアザミの日常ですが、彼女が夢中になっている音楽は彼女にとってかけがえのないものであり、彼女自身を支えてくれるものでもあります。 好きなことに夢中になったり、進路や友達のことで悩んだり、日常の些細なことで一喜一憂していた日々を尊く愛おしく思える一冊です。また、作者は2009年に『ポトスライムの舟』芥川賞もとっています。(し)
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「Gマーク」が何か知っていますか? 斜めになった「G」のロゴを見たことがある人は多いでしょう。あれは、「グッドデザイン賞」を受賞したモノに付けられるマークです。 「グッドデザイン賞」を決めているのは、日本産業デザイン振興会です。 始まりは、先駆的なデザイナー、経営者、行政官などの「これからの日本にはデザインが不可欠だ」という想いからでした。 この本では、「グッドデザイン賞」の50年にわたる歩みを客観的に提示。総計3万余点におよぶ受賞対象の中から、エポックメーキングかつ展示にふさわしいデザイン100点を選んで掲載しています。Gマーク制度・主要文献なども収録されています。 今もよく見かけるあの商品も載っていて、おもしろいですよ。(も) |
この本は第42回の講談社出版文化賞写真賞を受賞した一冊です。 表紙にはしかめっつらでケーキ?を頬張る少女。かわいいとはまたちょっと違った印象ですが、黒目の大きな少女にはなんとも言えないインパクトがあります。 ページをめくると、本当に最近撮られたらの?と言いたくなるようなレトロな雰囲気の中で、色鮮やかな写真が少女の様々な表情を見せてくれます。 泣いていても、笑っていても、そして鼻水をたらしていても、どこか魅力的で、目が離せなくなる写真がたくさんあります。ちなみにこの女の子、もちろん実在はしますが、未来ちゃんという名前ではないそうです。 写真集は一般閲覧室の中でも奥の方に配架されていて、青少年と暮らしの交流室に来る人にとってはなかなか手に取る機会がないかもしれません。けれども。図書館には綺麗な写真集、ちょっと面白い写真集などたくさんの写真集があります。同じ特集に入れている『スモールプラネット』もおすすめです。(う) |
2012年「本屋大賞」第4位、第61回「小学館児童出版文化賞」を受賞したこの作品、みなさんご存知でしょうか。
長崎県五島列島にある中学校の合唱部のお話です。合唱部の顧問の松山先生は産休に入るため、同級生で音大卒の臨時教員である柏木に一年間の期限付きで合唱部の指導を頼みます。 美人の顧問につられて、女子だけの合唱部に男子が入部してきますが真剣に練習をしない男子に対して快く思わない女子。そこへ、県大会は混声で参加することになり、対立は激化するばかり。 そんな中、柏木先生はこの年の課題曲である「手紙〜拝啓、十五の君へ〜」にちなみ、十五年後の自分自身へ手紙を書くよう課題を出します。提出を義務付けられていないため、それぞれ抱えている秘密を綴るのですが・・・。
十五年後の自分がどうなっているかなんて誰にもわかりません。しかし、十五年後にはこういう自分になりたい、こうであって欲しいという気持ちはあるはずです。彼らのように今の自分自身を振り返りながら十五年後の自分へ手紙を書いてみてはいかがでしょうか。 また、作者の中田さんは別名義でも数多く小説を書いており、そちらなら読んだことがあるという人も多いかもしれません。気になった人はぜひ調べてみて下さい。(い) |
日本の国内で発表される文学賞を受賞した作品だけでその数は数知れず、「こんな賞が存在するんだ!」、と聞いてびっくりするような賞もたくさんありますよね。それが海外の文学賞ともなればいよいよ賞の数も受賞作品の数も膨大で、世界にはまだまだ私達の知らない面白い作品がごまんとあるのだということを教えてくれます。 本書はアメリカ合衆国で例年最も優れた児童文学作品の著者に与えられるニューベリー賞という賞で、2009年に銀賞を受賞した作品です。舞台はテキサス州東部のうっそうと茂った森の中、千年ものはるか昔と25年前、そして現在起こっている出来事が交錯し、物語は厚みと深みを増しながら、少しずつ少しずつ帰結へと進んでいきます。全体として決して明るい話ではなく、時間軸を行きつ戻りつする中でいくつもの悲しい出来事が降り重なり、淡々と展開されていく物語なのですが、最後はなんとか穏やかな結末を迎えます。暗くて深い森の中に一筋の光が差し込み、森全体が本来のぬくもりを取り戻すかのように・・・。 海外文学を読むのが初めての方にもとても読みやすく、中高生の皆さんはもちろん、大人も展開を愉しみながら色んな事を考えさせられる、そんな一冊となっています。日頃なかなか日本の小説以外読む機会の少ないあなた、是非手にとってみて下さい。(や) |
この他にも賞をとった本や賞に関する本を集めています。 ぜひご覧ください。 (予約もできるリストはこちら。) |