福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室

5月のおすすめ本

横巻き: こんな共通点があります

 本を読んでいて、この本とあの本にはこんな共通点があるな、と気づくことはありませんか?

 今回はそんな共通点のある本と、そのキーワードに関する本を集めました。

(リストはこちら。予約もできます!)

円形吹き出し: すべて貸出できます
貸出中の本は予約できます
テキスト ボックス: 最初のキーワードは図書館。

 1冊目は桜庭一樹著『GOSICK』。日本からの留学生・一弥は学園の図書館塔で金髪の少女、ヴィクトリカに出会います。授業にもいかず、一日中図書館で過ごすかなり風変わりな、でもどんな謎でも解いてしまう明晰な頭脳を持つ彼女と次第に親しくなるのですが・・・。2人はヴィクトリカ自身の秘密や世界大戦へと続く社会の流れに巻き込まれていきます。

 

 一弥たちの通う学園は寄宿舎がありますが、同じように寄宿舎で生活する少年たちが登場するのがケストナーの『飛ぶ教室』です。ドイツのギムナジウム(全寮制の高等中学)に通う5人の少年はクリスマスに飛ぶ教室という題の劇を上演しようとします。個性豊かな少年やそれを見守る大人、寄宿舎での生活などが生き生きと描かれています。子供の時に読んだという人も、もう一度読んでみてください。大人になってからもぜひ読んでほしい1冊です。

 

 3冊目は大人になってからも演劇に打ち込む人々を描いた有川浩の『シアター』。小さな劇団を主宰する巧は劇団の借金を返すために兄に泣きつきます。その額なんと300万円。鉄血宰相の異名をとることになる兄、司の出した肩代わりの条件は「2年以内に劇団の利益から借金を返済すること」という厳しいもの。わずか10人の小さな劇団の奮闘が始まります。

 

 他に演劇が出てくる小説には平田オリザ著『幕が上がる』や前田司郎『濡れた太陽』などがあります。

 

 4冊目はヴィクトリカと同じく天才的な頭脳を持つ少女が主人公のロアルド・ダール著『マチルダは小さな大天才』。4歳にして図書館の本を読破しそうな勢いで読書に励み、学校に通えば計算機が必要な計算問題を一瞬で説く、小さな天才マチルダ。でも両親はそんな彼女のことを理解しようともせず、学校の校長先生はかなり横暴。マチルダはそんな彼らに頭脳で対抗し、懲らしめてやることに。マチルダが次にどんなことをしでかしてくれるのか、楽しみになります。

『シアター』と同じ二人兄弟が出てくるのが伊坂幸太郎著『重力ピエロ』です。弟の春の職業はグラフィティアートを消すというちょっと変わったもの。仙台市内で起こる連続放火の現場に奇妙なグラフィティアートが残されていることに気付いた2人はその解明に乗り出します。どうやらこの落書き遺伝子のルールと関係しているようで、兄弟の過去にも関連が!?テーマとしては重たい部分もありますが、読み終わった後には爽やかささえ感じる物語です。

 

今度は同じ二人兄弟でも双子の兄弟が登場するのは宮部みゆき著『ステップ・ファザー・ステップ』。両親によるある意味育児放棄にあってもめげない中学生の双子、哲と直。そんな二人の暮らす家の庭にある日落ちてきたのはプロの泥棒。それも隣の家に侵入途中、雷に打たれてしまったというちょっとまぬけな事情で。子供だけでの生活は何かと大変。二人は彼を脅して父親のふりをしてもらうことに。

おもしろくてあたたかくなる作品です。

 

今度は女の子の双子の物語、乙一の『カザリとヨーコ』。二人は一卵性の双子なのに妹のカザリは母親に愛され、姉のヨーコは虐待を受ける日々。そんな日々はヨーコが迷い犬を保護し、飼い主に届けてあげた日から徐々に変わり始めます。結末はぜひ読んで確かめてください。

 

同じく双子の兄弟・姉妹が登場する作品としては有名なハリー・ポッターシリーズや三浦しをん著『風が強く吹いている』、ケストナーの『ふたりのロッテ』などがあります。

 テーマは最初の図書館に戻って門井慶喜著『おさがしの本は』。皆さんは図書館と聞くと貸出・返却のカウンターを思い浮かべるかもしれませんが、図書館に勤める主人公の受け持ちはレファレンスカウンター。利用者の様々な調べ物を手助けする部署です(県立図書館にも2階にカウンターがあります)。利用者も持ち込まれる調べ物は実にさまざま。生真面目な司書ががんばります。

 

 上記の司書と同じく公務員が主人公の小説が西澤保彦著『腕貫探偵』。ちなみに腕貫(うでぬき)とは袖口が汚れないように仕事の際にはめる筒状のアームカバーのこと。謎に直面して困っている人々は、奇妙な「市民サーヴィス課臨時出張所」という看板と腕貫をした自称市の職員に出会います。安楽椅子探偵ならぬパイプ椅子探偵として彼は話を聞いただけで真相を突き止めてしまうのですが、神出鬼没な彼自身の存在が一番の謎かもしれません。

 

 同じく公務員が奮闘するのが桂望実著『県庁の星』。主人公の野村は典型的な優等生タイプの県庁職員。エリート意識も出世意欲も強く、頭も固い。そんな彼が一年間田舎のスーパーマーケットに出向することに。今までとは勝手の違う職場に挫折を味わいますが、彼の考え方にも徐々に変化が現れます。はたして彼は無事県庁に戻り、出世することができるのでしょうか?

 

 ほかに公務員が出てくる物語として高殿円著『トッカン』、有川浩『県庁おもてなし課』、伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』などがあります。

 続いては公務員は公務員でも政治家の登場する畠中恵著『アコギなのかリッパなのか』。大学生と元政治家の事務所の事務員という二束のわらじを履く聖の周りには議員がたくさん。選挙対策に地元の有権者対応など政治家の世界が垣間見れて面白い小説です。出てくる議員さんよりも聖の方が有能に見えてしまいます。

 

 さらに特別な公務員、首相をその夫の目から描いたのが原田マハ著『総理の夫』です。そう、主人公の日和の妻は日本で最初の女性総理大臣。国民のためにと邁進する凜子、それを支えようと奮闘する日和、足をひっぱろうとする財政界の大物たち。現実にはこんな完璧な人はそうそういないという指摘はひとまず置いておいて読んでみてください。

 

 どちらも政治家の出てくる小説なんて小難しそうという先入観を取り払ってくれるはずです。