福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室

7月のおすすめ本

横巻き: アジアを感じる本

 アジアの国々は昔から日本と深い関わりを持ってきました。

 今回はアジアに関する本を集めました。 

(リストはこちら。予約もできます!)

円形吹き出し: すべて貸出できます
貸出中の本は予約できます
テキスト ボックス: 『ドラゴンキーパー 最後の宮廷龍 』
 キャロル・ウィルキンソン/著 
 金の星社
  930/ウィル/

『ドラゴンキーパー』の原書である『Dragonkeeper』は、作者キャロル・ウィルキンソンの初となる長編小説です。

舞台は、中国・漢王朝の時代です。主人公の少女は自分の名前や年齢を知りません。幼いころに両親に売られ、宮廷の龍守りである意地悪なランという男の奴隷として黄陵宮の片隅で暮らしています。少女の仕事は、家畜への餌やりやランの身のまわりの世話などでしたが、少女が成長するにつれてランの仕事である龍守りも押し付けられるようになります。少女が世話をするようになった龍の名は、ロン・ダンザ。龍は老いているが、姿を変えることができ、千里眼で遥か遠く見る力を持っています。ある出来事をきっかけに、少女と龍、少女の唯一の友達であるネズミのフアは黄陵から逃亡することになり、海を目指す旅に出ます。なぜ逃亡することになったのか、海を目指すのか…何が起きるか分からないファンタジーな冒険の世界をお楽しみください。

 

旅の途中での出会いや体験、そして龍とのふれあいを通して少しずつ成長していく少女の姿に胸が熱くなるような一冊です。(さ)

テキスト ボックス: 『天、共に在り アフガニスタ
 ン三十年の闘い 』
 中村 哲/著  NHK出版
 333/826/6

 福岡の三笠で生まれ、若松で育った昆虫好きの少年が、医師となり、アフガニスタンに渡り、医療活動だけでなく、井戸を掘り、灌漑用水路を拓くことになる、そのいきさつが紹介されています。

 

 貧困、干ばつ、砂嵐、洪水、「対テロ戦争」の空爆、外国の干渉、さまざまな困難の中、水を確保し、砂漠を開拓し、自給自足の農村を復活させること、これは自然の中で、その土地の人と共に、問題に取り組んでいく現実的な闘いの積み重ねです。

 

 ふりがなが少なく、難しい言葉も多いですが、読み進めるうちに気にならなくなります。

 

 自分の命を、一体全体どんな仕事に使うのだろう、どうやってその仕事に向き合い、なかまと「信頼」の絆を築き、共に実現、持続させていくのだろう、そういったことを漠然と考えることもあるだろう若い方々に、中村医師が三十年、何と闘っているのか、自然を文化を歴史を人を政治を事業を、どのようにまなざし、行動してきたのか、やわらかい感性で出会っていただきたいと思える力強い本です。(や)

六世紀中国、南北朝時代末期の北斉に(らん)(りょう)(おう)(こう)(ちょう)(きょう)という武将がいました。皇帝の甥であり、十八にして智勇兼備、不敗の名将とうたわれていた蘭陵王は、隣国の周国が斉国に戦を仕掛けてきたことにより、周国の軍を撃退する勅命を皇帝から賜り戦さへ向かうのでした。

この蘭陵王・高長恭は実在した人物で、「音容兼美」と言われるほど美しい声と麗しい美貌のため、配下の兵たちが見惚れて士気が上がらず、敵に侮られまいと顔を鬼面で隠して戦さへ出ていっていたそうです。

 北周の軍が洛陽一帯を包囲したとき、蘭陵王が北周軍を退けた武勇を称え兵士たちが歌った「蘭陵王入陣曲」という曲は唐の時代日本にも伝わり、蘭陵王の活躍は現在でも舞楽「陵王」として神社の奉納舞などで舞われています。

 

 三国志の時代から三百年ほど後の乱世を生きた蘭陵王の波乱万丈な生涯を、本作のヒロインである徐月琴の視点から史実を織り交ぜ書かれています。歴史小説が得意ではない方にもおすすめです。(お)

  みなさん、タブラという楽器をご存じですか?ちなみに私はこの本を読むまで知りませんでした。何かというと、インドの伝統的な打楽器です。さて、この本の著者のUzhaan(ユザーン)さん、一体何者なのかといえば、日本を代表するタブラ奏者なのです。おそらく本名ではありません。

 肝心な本の中身といえば、著者のタブラの師匠がインド在住で、その師匠に会いに行く。と、まあ簡単にはそういう内容です。著者がインドでの道中をtwitterでつぶやいているので、時間経過がとてもわかりやすいです。

旅行ガイドや、紀行小説ではなく、海外旅行中の知り合いのtwitterを読んでいるような親近感があります。思わずツッコミたくなるようなつぶやきが、これまた自然体の、生活感丸出し、かっこよくとか、綺麗に見せようといった気遣いがおよそ感じられない写真も、文章と良く合っています。この本を読んでも私はインドに行ってみたいとは思いませんでした。しかし、インドの日々の生活は予想もつかないことの連続で、自分の価値観なんて、きっと半日で覆されるんだろうなぁ。そんな気持ちにさせてくれる一冊です。

余談ですが、私はユザーンさんのタブラ演奏を聴く機会がありました。言葉では言い表せない高揚感がありました。気になった方は音楽も合わせて聴いてみてください。(うし)

 韓国ではお正月はとても大切な祝日であり、お正月に着るものを新調する習慣があるそうです。タイトルの「ソルビム」とはお正月に初めて着る晴れ着のことです。

 韓国の伝統衣装と言えばチマ・チョゴリと答えられる人は多いと思いますが、実際にどんな服なのか説明できますか?チマとはくるぶしまである巻きスカート、チョゴリは上着を指します。これは女性の服装で、男性はバジ(ズボンのようなもの)とチョゴリを着ます。

 

 この絵本の中では女の子がソルビムを着ていく様子が丁寧に描かれています。お正月らしい真っ赤なチマに、花の刺繍が入ったポソン(足袋)、セットンチョゴリ、そしてペシテンギ、ティットン、チョバウィなど言葉は聞きなれないものばかりですが、とても綺麗で、読んでいると晴れ着を作ってもらった女の子のようにわくわくしてきます。

 

 男の子の晴れ着を紹介した『ソルビム2』もあります。(う)

 この他にもアジアに関する本を集めています。

 ぜひご覧ください。 (予約もできるリストはこちら。)

テキスト ボックス: 『蘭陵王』
 田中 芳樹/著
 文藝春秋
 F/タ290/10
テキスト ボックス: 『ムンバイなう。インドで僕はつぶやいた 』
 U−zhaan(ユザーン)  著
 ブルース・インターアクションズ
 292/55/1 
テキスト ボックス: 『ソルビム』
 ペ・ヒョンジュ/著
 セーラー出版
 E/ソ
文春文庫<br> 蘭陵王