福岡県立図書館 青少年と暮らしの交流室

11月のおすすめ本

横巻き: 古くてもおもしろい

 教科書に載っているような名作や、伝統芸能と言われるような芸術。古臭いと敬遠していませんか?確かに難しい部分もありますが、触れてみると意外に面白いものです。今回はそんな本を集めました。

(リストはこちら。予約もできます!)

円形吹き出し: すべて貸出できます
貸出中の本は予約できます
テキスト ボックス: 『一冊でわかる狂言ガイド 』
  丸岡圭一 監修 
    成美堂出版
   7773/9/42

 狂言、国語の授業で一度は触れたことがあるのではないでしょうか。私は小学56年生の頃に習ったと思います。まさにカルチャーショックでした。特に印象に残っているのが、犬の鳴き声です。現在は「ワンワン」、英語では「BOW WOW」(バウワウ)まあ、英語でもそう大して日本語と変わらず、犬の鳴き声だな、と分かるわけです。しかし、狂言で犬の鳴き声を表すと、「びょうびょう」です。びょうって…。小学生の私はもう何がなんだかさっぱりでした。さらに授業で狂言師の方の映像を観たり、聴いたりしました。セリフの独特の言い回し、言葉使い、当時の私の頭には全く入ってきませんでした。ただ、犬は「びょうびょう」と鳴く。それだけはしっかり覚えています。

 

 そんな、当時の私に是非読ませたかったのが、この本です。狂言は、「曲」といわれる演目があるのですが、それを非常に分かりやすく、写真付きで解説してあります。狂言の演目には人生訓や、とんち話など、現在の我々にも通じる内容がたくさんあります。入門書にはもってこいの一冊です。(牛)

テキスト ボックス: 『ちくま日本文学017 森鷗外 』
    森鷗外/著  筑摩書房
913/6/881

この文庫本には、森鷗外の代表作といわれる「舞姫」「山椒大夫」「高瀬舟」なども収録されていますが、今回は「最後の一句」をご紹介します。

 
 船の運送業を営む桂屋太郎兵衛は、海難事故に乗じた積荷横領事件に関わった罪で捕らえられ、3日後の斬罪(死刑)が決まります。それを知った16歳の長女いちは「父の代わりに自分たちを処刑してほしい」という嘆願書を徹夜で書きあげ、幼い弟妹とともに、早朝の奉行所に直訴に行きます。しかし、大人のやらせではないのかと疑われ、子どもたちは、拷問道具が並べられた奉行所の白洲で取り調べをうけます。東町奉行、城代も同席し、役人たちに囲まれ、取り調べを行う西町奉行佐々又四郎に答え、いちがしずかに言った最後の一句が鋭くつきささります。


 鷗外の小説の中で私が特に魅力を感じるのは、人間の中にある強い思いが、表出する瞬間を描き出す筆致です。力なきものが心を決めた時の神々しいまでの美しさや凄みが、短い物語の中に力強い生命の輝きを放っています。この切れ味でたった20ページ、読んでみてください。 (や)

文楽というと「はてなんぞや?」と思う方も多いのではないでしょうか。文楽とは、義太夫節で語られる詞章とともに人形をあやつる人形浄瑠璃という伝統芸能のことを指します。

義太夫を語る「太夫」、味線を弾く「三味線」、人形をあやつる「人形」の三業から成っている文楽。

本書はそんな文楽に魅せられた著者の楽屋訪問や演者へのインタビュー、歌舞伎と文楽の違いや『仮名手本忠臣蔵』『女殺油地獄』のストーリー解説など満載のエッセイになっています。

特にストーリー解説は江戸時代のお話を現代の感覚で解説しているため、とてもわかりやすくなっており、お話の筋を知りたいという方も読みやすいのではないでしょうか。

 文楽にちょっと興味はあるけれどなかなか手がでないという方、歌舞伎など伝統芸能がお好きな方におすすめです。

 

 著者の『仏果を得ず』という作品はこの人形浄瑠璃のお話になっています。あわせて読んでみると2倍面白いかもしれません。(お)

 みなさん「落語」を聞いたり見に行ったりしたことはありますか。「落語」というとどのようなイメージがありますか。今回は、もしかしたら今思っている「落語」のイメージが変わるかもしれない本をご紹介します。

 

 この本は、中学卒業と同時に落語の世界に就職した柳家花緑という落語家のお話です。子どもの頃から勉強ができなかったという柳家花緑は、テスト0点が当たり前、本は18歳になるまで読んだことがない男の子でした。そんな男の子が、落語の世界に入ってから様々なことに挑戦し、成長し、プロへの道を極めていきます。その姿や考え方から、自分と照らし合わせてみると何か得られるかもしれません。

 

 あとがきでは、柳家花緑は「落語は演じるほうにも聴くほうにも想像力がたいせつなんだ」と語っています。その理由は、ぜひ読んで確かめてみて下さい。また、第4章では、いくつかの落語が解説つきで紹介されているので、そちらもお楽しみください。落語の世界を垣間見ることができる一冊です。(さ)

 舞台では立て板に水という言葉が相応しいしゃべりを見せる落語家だって普段からそうな訳ではありません。

 主人公の今昔亭三つ葉の職業は噺家。つまり落語家です。落語のことは好きで好きでしょうがないけれど、26歳と若く、頑固で気も短い。ようやく羽織を着ることが許され、一人前と認められる二ツ目(落語の世界では見習い、前座、二ツ目、真打という身分があるそうです)。そんな彼が噺家だからという理由で全くの素人に落語指南を頼まれることに。生徒たちはテニススクールのコーチしているのにあがり症の従弟や、口下手故に誤解されやすい女性、赤面症の野球解説者など一癖も二癖もあり、なおかつしゃべることに苦手意識を持っている人ばかり。彼らはしゃべりのプロであるはずの三つ葉を頼ってきたのですが・・・。

 

 生徒だけでなく主人公もまた不器用なのですが、一生懸命に生きていて応援したくなります。また、落語の楽しさと同時に言葉の大切さも感じさせてくれる作品です。(う)

 この他にも名作や伝統芸能・古典に関する本を集めています。

 ぜひご覧ください。 (予約もできるリストはこちら。)

テキスト ボックス: 『あやつられ文楽鑑賞』
 三浦/しをん 著
 ポプラ社
 777/1/58
テキスト ボックス: 『15歳の寺子屋 落語が教えてくれること』
  柳家 花緑/著  
  講談社 779/13/227
テキスト ボックス: 『しゃべれどもしゃべれども』
 佐藤 多佳子著
 新潮社
 F/サ111/1