アリスの見習い物語

 カレン・クシュマン 著 
中村悦子 絵
      柳井 薫  訳          
あすなろ書房 1997年

 

家もなく、字も読めない女の子が、産婆のジェーンの元で見習いをします。ある時、その女の子は、自分の名前を響きがきれいで、親しみやすい名前「アリス」とつけます。            
 アリスは、ジェーンからは直接産婆の技や知識を教えて
もらえなかったので、窓越しに観察して、知識を増やしました。しかし、アリスは初めて立ち会った出産で何もできず、町を逃げ出します。そしてある宿屋で働きます。
 すると、ジェーンが宿屋にやってきて「うちに欲しいのは、あきらめない子だ。」と話しているのを耳にします。
 ある日、アリスは、再び出産の場面に遭遇しましたが、迷ったあげく一人で立ち会い、無事に子どもを取り上げます。その父親から感謝の祈りを受け、心が満たされたアリスは一人前になる希望を持ってジェーンの所へ戻っていきました。

えんの松原

伊藤 遊 著
太田大八 画
   福音館書店 2001年



 平安時代のこと。縁者を頼り女装して宮中で女童として
働いている音羽は、ふとしたことから東宮憲平と知り合います。体の弱い憲平は幼い頃から物の怪に悩まされ、度々病に伏していました。  
 そんな憲平を救うために音羽は怨霊の巣窟になっている
「えん(怨)の松原」に乗り込んでいきます。そこで、憲平を苦しめていた怨霊が、実は本来女として生まれてくるはずだったもう一人の憲平であったということがわかります。世継ぎの男子を得るため、祈祷で消された少女の怨みを知った憲平は、怨霊に立ち向かう決心をします。
 音羽とともに「えんの松原」へ出かけ、憲平が少女の思いを抱きとめたとき、少女の魂は解き放たれ、その体は鳥になり憲平の腕の中から天を目指して飛び立っていきました。

クレージー・マギーの伝説

 ジェリー・スピネッリ 作 
菊島 伊久栄 訳

 偕成社 1993年


 ある日、黒人と白人が別れて暮らしているトゥ・ミルズ
の町へ、家も家族もない12歳の白人の少年マギーがやってきました。マギーは、フットボールや野球で人並みはずれた才能を発揮します。ふしぎな魅力を持つ彼は、人々から「クレージー・マギー」と呼ばれるようになりました。            
 マギーは、黒人の少女アマンダの家族と一緒に暮らすようになり、安息を得ますが、白人だということで黒人社会から追い出されてしまいます。その後、白人のグレイスン老人と出会い、幸せな日々を過ごしますが、老人は突然死んでしまいます。
 一人になったマギーと、以前争って負けたために彼を嫌うマーズ・バーとの間に、ある事件をきっかけに友情が芽生えます。マギーの気持ちを察したマーズ・バーは、アマンダを呼びます。アマンダは、マギーを家に呼び戻し、マギーはずっと欲しかった家族を手に入れたのです。

黒い兄弟

 リサ・テツナー 著  
 酒寄進一 訳

 あすなろ書房 2002年 
*旧版あり 

 スイスの山奥の貧しい農家の子ジョルジュは、ある冷害の年、人買いの男に売られ、ミラノで半年間煙突掃除夫として働くことになります。道中、秘密をかかえたアルフレドと出会い、親友の誓いを交わします。                           
 ミラノでの仕事は、食事さえろくに与えられず、素手で煤をかき出すという苛酷なものでした。でも、親方の娘アンジェレッタとの出会いは、唯一ジョルジュの心をなぐさめてくれました。町の不良少年達との反目、親友の死、次々と降りかかる困難を掃除夫仲間の友情と団結で乗り切り、ジョルジュはついには夢をかなえます。

クローディアの秘密

   E.L.カニグズバーグ 作  
        松永ふみ子 訳               
岩波書店    1969年


  クローディアは、ニューヨーク近郊に住むもうすぐ12歳の女の子です。3人の弟の姉であることに不満いっぱいの彼女は、入念な家出計画を立て、お金を貯めている9歳の弟ジェイミーを誘って、メトロポリタン美術館にもぐりこみます。ある日ふたりは、ミケランジェロの作品かもしれないと評判の天使の像に興味を持ち、その秘密を探っていきます。決定的な証拠を見つけ、美術館の館長に手紙を書きますが、その証拠だけでは謎の解明にはならないこと言う返事をもらいます。どうしても真実を知りたいクローディアは、思い切って元の持ち主のフランクワイラー夫人を訪ね、証拠を発見し、夫人とともに3人の秘密にしました。

 

ゲド戦記 1 影との戦い

 アーシュラ・K・ル=グウィン著  
      清水真砂子   訳
岩波書店 1976年

 



 アースシーの小さな島ゴントに生まれた主人公の少年は
生まれつき強い魔力を持っていました。魔法使いの弟子となった少年は師匠からゲドという真の名をもらい、自分の才能をより活かすため魔法の学校へと通うことになります。                          
 しかし、仲間たちへの敵対意識から危険な魔法を使ったため、闇の世界のものを呼び出してしまい、自分の命も狙われるようになります。なんとか闇のものを追い払おうと旅を続けるうちに、かつての師匠と再会し、闇が自分に深く関わりがあることに気付きます。やがて闇のものが自分の影だと悟ったゲドは、闇を受け入れひとつになることで自分の影に勝利し、自由を手に入れます。
 全部で5巻で、『こわれた腕環』『さいはての島へ』『帰還』『アースーシーの風』があります。



       十一月の扉         

 高楼方子 著
 リブリオ出版  1999年

 

二学期のある日、中学生の爽子は父親の転勤で転校することになりました。けれども、爽子は転校したくありませんでした。そこで、爽子は、以前から憧れの家である「十一月荘」に下宿をさせてもらうことにしました。
 爽子にとって十一月荘の暮らしは大変快適なものでしたが、どこか孤独も感じていました。 
 爽子はお小遣いをはたいて買った高価なノートに、自分
が創作した『ドードー森の物語』を綴っていきます。
 十一月荘の人たちの暖かさに触れながら、思春期の爽子は次第に成長していきます。爽子は、物語も完成し、二学期が終わると同時に、両親の元へ戻るために十一月荘を発って行きました。

空色勾玉

荻原規子 作
 徳間書店 1996年 
 *旧版あり

                                                                               

 神々が地上を歩いていた古代の日本、豊葦原を舞台とした物語です。輝(かぐ)の世界に育ち、御子の月代王に憧れて采女となる狭也は、実は闇(くら)の氏族の巫女姫、水の乙女であることを知らされます。一方、稚羽矢は不老不死の輝の末子に生まれながら、輝の御子・照日王の保護を逃れ、闇の氏族と共に生きることを選びます。光と闇の二つの力がせめぎあう戦乱の中で、限りある生を生きる闇のために、そして自分達の生きる場所を見つけるために力をあわせて戦います。「白鳥異伝」・「薄紅天女」と続く「勾玉」をめぐる古代ファンタジー3部作の第1作です。                               

はてしない物語

  ミヒャエル・エンデ 作  
上田真而子・佐藤真理子 訳
 岩波書店 1982年 
 

                                                         
 ある日、古本屋からこっそり1冊の本を持ち出したバスチアン少年は、学校の屋根裏の物置でその本を読み始めます。それは、「はてしない物語」という題名で、正体不明の虚無に侵されて滅亡の危機に瀕した王国「ファンタージェン」の物語でした。
 読み進めていくうちに彼は物語の主人公達が自分に助けを求めていることを知り、王国を救うために物語の中へ飛び込んでいきます。物語の中で仲間達に助けられながら、バスチアンは成長を遂げ、愛されることよりも愛することの大切さに気付きます。元の世界へ戻った彼は、これまで分かり合えなかった父親と心からうち解けることができました。

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